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150〜400テスラ級超強磁場下における誘導法磁化測定手法の開発

 100 T (テスラ) 以上の超強磁場下における物性研究でポピュラーなテーマの一つが、反強磁性体の磁場誘起相転移です。これを検出する基本手段が磁化測定なのですが、パルス超強磁場発生環境下では大電流放電に伴う電磁ノイズや磁場の急激な時間変化に伴う巨大誘導電圧のために、自己補償ピックアップコイルを用いた誘導法は容易ではありません。特に難しいのが試料の磁化信号に比べてはるかに大きい外部磁場由来のバックグラウンドの差し引きで、バックグラウンドを精度良く測定できなければ正しい磁化曲線を得ることができません。既存技術では130 T以上での精密磁化測定は困難な課題でした。

 我々は、ピックアップコイルの設計を一から見直しました。具体的には、従来の平行型 ではなく新たに同軸型のピックアップコイルを考案し[A]、コイルのサイズや巻き数の最適化を行いました。3年にも及ぶ試行錯誤を経て、最終的に一巻きコイル法磁場発生装置を用いた150 Tまでの精密磁化測定を実現しました[B]。さらに、この技術を電磁濃縮法磁場発生装置に応用し、300〜400 Tにも及ぶ高磁場領域までの磁気相転移の検出にも成功しました[C]。この技術開発により、これまで誰も観測することができなかった数多くの反強磁性体の強磁場物性を一網打尽にすることが可能になります。

関連論文

[A] M. Gen et al., J. Magn. Magn. Mater. 473, 387 (2019). (原著論文[1])
[B] M. Gen et al., Phys. Rev. B 101, 054434 (2020). (原著論文[3])
[C] M. Gen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 120, e2302756120 (2023). (原著論文[22])
Magnetization