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極性フェリ磁性体への元素置換による巨大電気磁気効果の増強

 温度変化や外部磁場印加による磁気相転移に伴って電気分極が生じるマルチフェロ物質は、21世紀初頭に発見されて以降盛んに研究されてきました。しかし、応用上の観点からなるべく大きな電気分極変化 (ΔP ) を示す物質の発見が重要なのですが、現実には10 mC/m2以上の大きな電気分極変化 (ΔP )を示す物質はなかなか発見されていませんでした。

 極性フェリ磁性体CaBaCo4O7は、これまでに発見されたマルチフェロ物質の中で最大のΔP を示すことが知られています。この大きな電気磁気効果 (ME) は、62 Kから69 Kの間で生じる反強磁性相から、さらに低温で安定となるフェリ磁性相への転移に伴って生じ、温度変化のみならず磁場印加によっても引き起こすことができます。我々は、母物質CaBaCo4O7のCoサイトをわずか2.5%のNiで置換することにより、電気磁気効果を大きく増強できることを実証しました。具体的には、①ΔP の大きさが8 mC/m2から10 mC/m2以上に増加し、②磁場印加に伴う巨大電気磁気効果の発現温度領域の広さも10倍以上に拡張されました。本研究は、既存のマルチフェロ物質への元素置換が電気磁気効果を増強させる有効なアプローチであることを示唆しています。

関連論文

・M. Gen et al., Phys. Rev. B 105, 214412 (2022). (原著論文[14])
CaBaCo4O7