ファイバー・ブラッグ・グレーティング (FBG) 法を用いた多軸歪み同時測定
歪み測定は、磁気転移や価数転移といった様々な相転移の検出や臨界性の議論などに非常に有用な実験的アプローチです。物性物理業界ではキャパシタンスや歪みゲージ抵抗を用いる検出手法が主流ですが、近年ファイバー・ブラッグ・グレーティング (FBG) 法と呼ばれる光学的な検出手法が流行の兆しを見せています。FBG法では、コアに回折格子が書き込まれた光ファイバーを試料に接着することで、試料の歪みを反射光のブラッグ波長変化として検出します。セッティングが簡便である上に、相対変化ΔL/L〜10-7の検出精度を誇るのが強みです。また、高速検出が可能で電磁ノイズの影響を受けないために、パルス強磁場中でも適用することができます。
我々は、FBG法を用いた多軸歪み同時測定手法の開発を行いました。定常磁場での測定には、インテロゲータsi155 (LUNA社) を用います。3本のファイバーを単結晶の3つの主軸に直交するように接着することで、マルチフェロ物質の磁化・電気分極変化に伴う3方向の格子歪みを同時に検出することに成功しました[A]。パルス強磁場中では試料空間の制約のためにセッティングが難しくはなりますが、非破壊型パルスマグネットを用いた2軸歪み同時測定によって、重い電子系超伝導体UTe2のメタ磁性転移に伴う体積変化および磁歪の異方性を解明しました[B]。さらに、一巻きコイル法を用いた破壊型パルス超強磁場下においても、通常よりボア径の大きなプローブと大型ヘリウムフロークライオスタットを開発することで、最大磁場130 T・最低温度5 Kまでの2軸歪み同時測定を実現しました。これにより、通常の磁性体の磁気相転移のみならず、価数や軌道秩序状態の変化の可能性を議論することが可能になりました。これは、近年SACLAで開発された「可搬式一巻きコイル法パルス強磁場発生装置を用いたシングルショット粉末X線回折実験」を補完する強力な実験手法です。現在、これらの手法を用いた共同研究を広く展開しています[C-E]。ご興味のある方は、是非ご連絡いただければ幸いです。
[B] A. Miyake, M. Gen et al., J. Phys. Soc. Jpn. 91, 063703 (2022). (原著論文[12])
[C] T. Kurumaji, M. Gen et al., Phys. Rev. Mater. 6, 094410 (2022). (原著論文[16])
[D] M. Gen et al., Phys. Rev. B 107, L020410 (2023). (原著論文[19])
[E] Y. Watanabe, M. Gen et al., Nat. Commun. 14, 1260 (2023). (原著論文[21])
我々は、FBG法を用いた多軸歪み同時測定手法の開発を行いました。定常磁場での測定には、インテロゲータsi155 (LUNA社) を用います。3本のファイバーを単結晶の3つの主軸に直交するように接着することで、マルチフェロ物質の磁化・電気分極変化に伴う3方向の格子歪みを同時に検出することに成功しました[A]。パルス強磁場中では試料空間の制約のためにセッティングが難しくはなりますが、非破壊型パルスマグネットを用いた2軸歪み同時測定によって、重い電子系超伝導体UTe2のメタ磁性転移に伴う体積変化および磁歪の異方性を解明しました[B]。さらに、一巻きコイル法を用いた破壊型パルス超強磁場下においても、通常よりボア径の大きなプローブと大型ヘリウムフロークライオスタットを開発することで、最大磁場130 T・最低温度5 Kまでの2軸歪み同時測定を実現しました。これにより、通常の磁性体の磁気相転移のみならず、価数や軌道秩序状態の変化の可能性を議論することが可能になりました。これは、近年SACLAで開発された「可搬式一巻きコイル法パルス強磁場発生装置を用いたシングルショット粉末X線回折実験」を補完する強力な実験手法です。現在、これらの手法を用いた共同研究を広く展開しています[C-E]。ご興味のある方は、是非ご連絡いただければ幸いです。
関連論文
[A] M. Gen et al., Phys. Rev. B 105, 214412 (2022). (原著論文[14])[B] A. Miyake, M. Gen et al., J. Phys. Soc. Jpn. 91, 063703 (2022). (原著論文[12])
[C] T. Kurumaji, M. Gen et al., Phys. Rev. Mater. 6, 094410 (2022). (原著論文[16])
[D] M. Gen et al., Phys. Rev. B 107, L020410 (2023). (原著論文[19])
[E] Y. Watanabe, M. Gen et al., Nat. Commun. 14, 1260 (2023). (原著論文[21])

