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パルス強磁場下におけるシングルショット粉末X線回折実験

 物質の状態を詳細に調べるためには、微視的なプローブを用いた測定が不可欠です。パルス超強磁場という極限環境下でのミクロ物性測定は非常にチャレンジングですが、強磁場科学の発展のためには避けては通れない課題でした。最近電通大の池田グループが中心となって、SALCAのX線自由電子レーザーとポータブルパルス超強磁場発生装置PINK-02を組み合わせたシングルショットX線回折実験の開発を進めており、2024年時点で最低10 K、最大110 Tまでの粉末X線回折実験が可能になりました[A]。

 この装置を用いて、ブリージングパイロクロア格子磁性体CuGaCr4S8の磁場誘起相転移における格子対称性の変化を調べました。CuGaCr4S8は、31 K以下で直方晶歪みを伴う構造相転移を起こして不整合らせん磁気秩序を発現します[B]。磁場を印加すると40 Tでメタ磁性転移が起き、1/2磁化プラトーを発現します[C]。今回は、この磁化プラトー相に着目して最大磁場55 Tのパルス磁場発生のもとで粉末X線回折実験を行いました。その結果、ゼロ磁場で分裂していたX線回折ピークが全て1本のシャープなピークに変化する様子が観測されました[D]。これは、磁化プラトー相の格子対称性が立方晶であることを示唆しており、3-up-1-downの磁気構造から期待される格子対称性とも整合しています。

関連論文

[A] A. Ikeda, M. Gen et al., to be submitted. (原著論文[xx])
[B] M. Gen et al., J. Phys. Soc. Jpn. 93, 104602 (2024). (原著論文[29])
[C] M. Gen et al., Phys. Rev. Mater. 7, 104404 (2023). (原著論文[24])
[D] M. Gen et al., to be submitted. (原著論文[xx])
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